雪
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尚子(ナオコ)
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敬行(タカユキ)
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「もう、ここでいいから」
私はそう言って敬行の手から荷物を受け取ろうとした。
駅前の朝。
週末のせいか、人の数は多かった。
電車の時間には余裕があった。でも、ここでいい。
ここからは、一人でも大丈夫。
「いいよ。まだ時間あるんだし。電車来るまで付き合うよ」
敬行はそう言うと、私に荷物を渡さずそのまま駅へと歩き出した。
・・・・分かってないなぁ。
私は少し笑みがこぼれた。変わってない。彼の優しい所も鈍感な所も。
それとも、本当にまだ私と居たかったんだろうか。
これが、最後になるから・・・・・。
「分かった。じゃ、電車が来るまでね」
切符はもう買ってある。
電車が来るまでの間、私たちはベンチに腰掛けて待っていた。
こうやって彼に見送られるのも、これが最後だ。
時間があって2人でいると、余計なことばかり頭に浮かんでくる。
もう。決めたことなのに。
「ここでよく尚子を待ってたな」
敬行が口を開く。自分の腕時計を見つめながら。
「結構電車が遅れたりして。俺、待たされてた記憶があるよ」
「しょうがないじゃない。私のせいじゃないんだもん」
確かに。よく待たせたことはあった。でも。
最初にグチを言われるだけで彼はすぐに笑って「おかえり」と言ってくれた。
・・・おかえり。ここには確かに、私の居場所があった。
---田舎娘の私は大学進学と共にこの地にやってきた。
敬行とは、その大学のサークルで知り合ったのだ。
それは珍しいことでも何でもなく。
私たちが付き合い始めたのも自然なことだったと思う。
私は敬行の優しさに惹かれ、一緒に暮らし始めた。
やがて卒業し、それぞれ社会人となる。
全てが上手くいくと信じていた。あの頃と同じように----。
「雪だよ、雪!」
誰かの声がした。
こんな時期に、雪なんて。
「雪か・・・。」
敬行がつぶやいた。電車の音がする。アナウンスが流れた。
・・・私たちは無言だった。電車はホームに入ると、私を促している。
私は電車に乗った。敬行から荷物を受け取る。
「・・・ありがと・・・・」
言葉につまった。だめだ。泣いてはだめだ。
心ではそう言い聞かせているのに、鼻の奥がつんとしていた。
敬行はじっと私を見ている。
私が口を開け掛けた時、ドアが無情にも遮ってくれた。
「敬行!」
彼はぱっと顔を背けた。ドアを叩いてもその音は聞こえない。
「敬行。・・・がんばってね」
聞こえなくてもいい。
私の思いは今も変わらない。そう。きっと彼の思いも。
電車は動きだし、彼は見えなくなっていく。
窓の外の景色が見える。
にじんだ景色の中、私は確かに雪を見たような気がした。
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「もう、ここでいいから」
尚子はそう言って、俺に右手を差し出した。
俺は尚子のバックを持っていた。重い荷物だ。
朝の駅前は週末のせいか人が多かった。
電車の時間にはまだ早い。
俺達が別れるのも、まだ早すぎる。
「いいよ。まだ時間あるんだし。電車来るまで付き合うよ」
俺はそう言って、先に駅へと歩き出した。
この駅に来るのも久しぶりだ。
学生の頃は帰省する尚子の送り迎えによくここに来ていた。
就職してから尚子は滅多に帰らなくなった。
・・・でも、今日の帰省は最後になる。
「分かった。じゃ、電車が来るまでね」
駅のホームに人はまばらだった。
俺達は適当なベンチに腰を下ろした。
近くにカップルの姿が見える。
他人から見れば俺達も十分カップルに見えるだろう。
でも俺達の未来は別々なのだ。
「ここでよく尚子を待ってたな」
時々時計の時刻が気になった。・・・まだ大丈夫だ。
「結構電車が遅れたりして。俺、待たされてた記憶があるよ」
「しょうがないじゃない。私のせいじゃないんだもん」
尚子は遅れて来ても決まって明るく俺に言った。「ただいま」と。
俺は小さく文句を言ったが仕方なく「おかえり」と答えた。
・・・ただいま。ここには確かに、あいつの居場所があった。
---尚子は地方から大学進学と共にこの地にやってきた。
俺達は、その大学のサークルで知り合ったのだ。
それは珍しいことでも何でもなく。
俺達が付き合い始めたのも自然なことだった。
俺は尚子の明るさに惹かれ、一緒に暮らし始めた。
やがて卒業し、それぞれ社会人となる。
それでも俺達は変わらないと信じていた。あの頃と同じように----。
「雪だよ、雪!」
誰かの声がした。
こんな時期に、雪か。
「雪・・・。」
尚子がつぶやいた。俺の声と重なる。電車の音がする。アナウンスが流れる。
尚子も俺も黙っている。ドアが開くと、尚子は電車に乗った。
尚子の右手に荷物を渡す。尚子の顔がよく分からない。
「・・・ありがと・・・・」
尚子の声がかすれていた。人一倍泣き虫のくせに負けず嫌いな尚子。
目には涙が見え隠れする。
俺は尚子を見ていた。尚子の唇が揺れた。
俺は咄嗟に下を向いた。何て言うんだ。別れの言葉を言うのか。
「敬行!」
声が聞こえた。ちょうどドアが閉まる。俺はそっと顔を上げた。
「敬行。------。」
名前は分かった。でもそこまでだった。
何を言っていてもいい。多分、それは「さよなら」ではないだろう。
電車は動きだし、どんどん見えなくなっていく。
俺は駅の外に出た。
人の多さは変わらない。雪はもう止んでいた。
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並列で並べてるけど、出来たらそれぞれ別に読んでね。
女の子なら『尚子』から、とか。それで次のを読んだとき、時々比べて欲しい。
私は女だから、ほんとに別れる時男の気持ちの方は想像でしかないのだけど。
この話はふっと朝ベッドの中で浮かびました。でも題材はあって。
『なごり雪』が頭に浮かんで、その歌詞を思い出して、これが出来たと。
昔の歌って、人を惹き付けるものがあると思いませんか?
ついでに言うと、この書き方は“氷室冴子”さんが書いてた小説のパクリです。
題名は忘れちゃったんだけど、男の子と女の子の視点から書かれてて2冊になってました。
知ってる人は知ってるかな?あれは、設定が高校くらいの学生だったんだけど(多分)
いつかどこかで、こんな風に書きたいなぁと思ってた所に『なごり雪』が浮かぶと。
久しぶりに書いたー。新作だよぉ。恥ずかしいけども(笑)
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